Page:Insect Literature by Lafcadio Hearn.djvu/45

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例を擧げて云へば、その女を蝶が花だと思つて、群を爲して後を追つた———それ程に匂ひ香んばしく又美はしかつたといふ、その支那の乙女の身の上の上全體を自分は知りたい。それからまた、蝴蝶に自分の愛人を選ばせたといふ玄宗皇總即ちミン、ヒワン帝の蝶に就いてもつと知りたいものだと思ふ。………帝はその驚く可き庭園で酒宴を催うされたものだ。それには非常に美しい婦人が陪侍をして居た。そしれ籠に入れてある蝶をその美人の間へ放たれると、蝶はその中の一番美しい婦人の處へ行つてとまるのであつた。するとその一番に美しい婦人へ皇帝の籠は與へられるのであつた。ところが玄宗皇帝が楊貴妃(支那人はヤン、クエイ、フエイと呼ぶ)を眼にせられてからといふもの、蝶に愛人を擇ばせることをさせられなかつた———それは不幸な事であつた。といふは、楊貴妃が帝を非常な困難へ陷らしめたから。………それからまた、日本ではソウシユウといふ名で有名な支那の學者で、自分が蝶になつた夢を見、その夢の裡で蝶が有つあらゆる感じを經驗したといふ、あの支那の學者の經驗に就いてもつと知りたいものだと思ふ。此人の精神は實際蝶の姿に成つてさまよひあるいたのであつた。それで眼が覺めた時、蝶の生涯の記憶や感情が